解説記事
易しい破損解析講座 破面から読み解く破壊の原因 その1 -破損破壊の種類と破面-(II)
著者:
野口 徹
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(前号 易しい破損解析講座 破面から読み解く破壊の原因 その1 -破損破壊の種類と破面-(I)から続く)...
解説記事
易しい破損解析講座 破面から読み解く破壊の原因 その1 -破損破壊の種類と破面-(I)
著者:
野口 徹
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1.1 はじめに   機械や構造物の設計、製造に拘わる技術者は、担当した製品、部材の破損破壊を多く経験します。客先からのクレームがある場合もあるし、時には大きな事故にもなります。プラントや設備の保全、管理に携わる技術者もまた日常的に種々の部材の破損破壊を経験することでしょう。保全技術者としては、その破損破壊が、そもそもの設計や製作に起因するのか、それとも運転や管理に問題があるのか、あるいは長期稼働による材料の劣化などによるやむを得ない破損破壊であるのかが(後に述べるように、このようなことは意外に少ないのです)大きな関心事です。 (脚注)ここでは、「力による、破面を生じるような材料の分離」を破壊と呼び、これに降伏・塑性変形、亀裂の発生と伝播、座屈による大変形、摩耗損傷なども加えて破損としています。しかしこれらを全て含んで破壊、破損という場合もあり、必ずしも厳密ではありません[6]。  もし設計や製作に起因するのであれば、設計や製造法に遡って改善しなければならないでしょうし、運転や管理に問題があるのであれば、点検や整備のマニュアルに明記して再発を防止する必要があります。これらを明らかにするためには破損破壊の原因(...
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易しい破損解析講座 破面から読み解く破壊の原因 その2 -破面から何が判るか-
著者:
野口 徹
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2.1 破面から読み取れる情報  前回の解説、その1 では破損破壊の原因を究明するための破損解析では調査の順序が大切であることを示しました。その中で、まず破損物の破面と破損状況から、破壊の種類と起点を判定することの重要性を述べました。  破面から色々な情報を読み取る技術を破面解析、フラクトグラフィ、と言いますが、これには目視から数倍程度のルーペ、実体顕微鏡等による巨視フラクトグラフィと、主としてSEM(走査型電子顕微鏡)による微視フラクトグラフィがあります。  破面の観察、破面解析によって、破壊の種類と破壊の起点の他、 破壊の伝播経路と終点、作用した応力(荷重)の方向とおよその大きさ、材料欠陥の寄与の有無、環境要因の寄与の有無、破壊の経過など、色々な情報を読みとることができます。  破面解析でもその順序が重要です。多数の破損個所があるような事故や、複数の部材の破損がからむ場合には、まず1/10(離れた位置から)破壊部全体の様相を観察し、記録する必要があります。次に1倍(目視)で破損品の破面を個別に観察し、第1破損の部材と起点部、全体の破壊経過を推定した後に、10倍、100倍と倍率を上げ、最後にSEMによる10...
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易しい破損解析講座破面から読み解く破壊の原因その4-環境要因が関係する破壊-
著者:
野口 徹,Toru NOGUCHI
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4.1 環境要因が関係する破壊概説 環境要因が関係する破壊の内、破損解析で頻繁に経験されるものは応力腐食割れ SCC (Stress Corrosion Cracking)と水素脆性 HE (Hydrogen Embrittlement)および液体金属脆性の 3つです。いずれも巨視的な様相、破面はぜい性破壊で環境ぜい化破壊と総称しています [1]。 SCCと HEは一定応力の下、特定の環境要因と金属の組み合わせで生じるものです。応力としては外的負荷のほか、塑性加工、熱処理、溶接等による内部残留応力、組立応力、熱応力なども要因となります。また、降伏点よりはるかに低い応力( 10~ 70%)でも生じるのが特徴です。割れの発生‐伝播‐破損破壊までに一定の時間があり、またその時間にばらつきがあることから、経年劣化、偶発的破壊と見なされる場合が多いです。しかし、破損解析では、材料と使用される環境あるいは製造工程の特徴からその原因を推論、特定することができます。確認には破面の SEM観察が必要であり、また要因イオンや鋭敏化の判定には EPMA等による詳細分析が有力手段です。...
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易しい破損解析講座破面から読み解く破壊の原因その3-破損の様相は重要な手掛かり-
著者:
野口 徹
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3.1 破面、破損状態観察の重要性 一般に破損破壊の原因調査、破損解析では化学分析や顕微鏡組織の観察、 SEMによる破面の詳細観察など、微視的な調査の重要性が強調されます。しかしこの解説では、そのような微視的で詳細な調査の前に、目視による巨視的な破面の観察および破損部近傍の変形状態などの観察が必要、重要であることを述べてきました。またこの段階で破壊原因の殆どが推論できることを幾つかの事例を上げて示しました。 SEMによる破面観察等の詳細調査はこの推論の確認、裏付けのためと位置付けています。全体の破損経過を考えずに詳細調査をするとかえって原因が判らなくなる場合さえあるのです。今回その 3ではさらに、破損品全体の破壊の様相が原因究明の重要な手掛かりになること、特に複数の部材が破損に関わっている場合、そのいずれがまず破損破壊したのかの推論判断(第一破損の推定)が重要であることを、いくつかの事例で紹介します。...